シニアライダーの日常・R1200Rと共に

シニアライダーの日常と記憶、愛車R1200Rと行くツーリングの記録と四方山話。

VAN Jacket(ヴァンヂャケット)とトラッドのこと

 

男は身なりなんかに気を使うもんじゃないというバンカラ気質がまだ残っていた昭和40年代終わり、四国の片田舎でしがない浪人生活を送っていた私に、現役合格して一年先に上京した友人が持ち帰って来たファッション知識がアイビールックでした。

 

アイビールックは、1950年代にアメリカ東海岸にあるハーバードやコロンビア、イェール等の「アイビー・リーグ」と呼ばれる名門私立大学の学生やOBの間で広まっていたファッションを基にしたスタイルです。髪は七三分け、ボタンダウンシャツ、三つボタンのブレザー、コットンパンツ、ローファーを着用するのが定番とされ、それが日本でも流行した1960年代にこのアイビールックで銀座のみゆき通りに集まった若者達は「みゆき族」と呼ばれていましたが、彼らの御用達がVAN Jacket(ヴァンヂャケット)だったのです。
みゆき族から10年程が経過し、この頃にはトラッドファッションと呼ばれるようになっていましたが、やはりVANはその中心的ブランドでした。

 

そう言われてみれば、高3の時に教育実習で来た体育科の大学生が、くるぶし丈の細身のスラックスを腰まで下げてはきこなし、シャツはボタンダウンでレジメンタルストライプのネクタイ(すべて後付けの知識です。)というファッションでした。ファッションに関する知識もなく、当時フォークシンガー達が履いていたベルボトム(大人はラッパズボンと言っていました。)ジーンズにロンドンブーツのスタイルが流行の最先端だと思っていた田舎高校生には理解できないファッションだったのですが、帰省した友人から仕入れた情報で、なるほどあれがと合点がいったものです。
そして、そこから私のトラッドへの傾倒が始まりました。バイブルとなったのが「MEN’S-CLUB」というファッション雑誌であり、そこで紹介されるVAN、KENTといったブランドが一着一着と増えていきました。

 

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Wikipediaより:このタグに憧れたものです。

 

ヴァンヂャケットは、石津謙介というファッションデザイナーが創業した企業ですが、流行のファッションブランドであるだけではなく、この時代の若者文化を創造した企業であり人物だったと思います。ヴァンが本社を構えた青山には、石津さんの影響を受けた若手デザイナーも続々と集結して、若者文化の発信地となりました。当時「プレイボーイ」と人気を二分した「平凡パンチ」という雑誌はこの雰囲気をよく表していて私も愛読していました。
「TPO」、「カジュアル」、「Tシャツ」、「トレーナー」、「スウィングトップ」、「ステンカラーコート」などというファッション用語は石津さんが作った和製用語であり、上記のMEN’SーCLUBという雑誌を通じて一生懸命憶えたものです。MEN’SーCLUBは数年間にわたりバックナンバーを揃えて、事あるごとに読み返していましたね。

 

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参照:https://saigo-kun.tumblr.com/post/144872240339/amp


大学時代はほぼこのトラッドファッションで通し、その後ニュートラ、ヨーロピアンに二、三年浮気したものの、すぐに戻って、それ以降はまたトラッド一筋です。
センターベントで段返り三つボタン、胴は絞らず、7mm幅のステッチが入ったジャケット・ブレザーに、スラックスはストレートで、3.5cm幅のダブル、というのが変わらないスタイルです。靴はコールハーンと言いたいところですが、そんな贅沢は出来ませんでしたので、もっぱらREGALを愛用していました。

 

トラッドファッションは変わらないスタイルが特徴ですので買い替える必要がなく、しかも胴回りは絞っていない寸胴型が基本ですからよほど肥満しない限りはずっと同じスーツを着続けることもできます。現に私は20年物のスーツを普通に数着持っていて、それを着回していました。
しかしそんなトラッドでもやはりその時々の流行に多少の影響は受けます。例えば昨今ではストレートのスラックスの幅は大分細く、丈は大分短くなり、みゆき族の時代に先祖返りしたような感じですし、REGALのプレーントゥという定番靴もつま先が若干細くなっています。私は靴も同じ型を3足で回していましたので結構長持ちして、おかげで流行からは遠い靴をずっと履いていましたね。周りからは流行に疎い、冴えない爺さんと思われていたでしょうが、私なりの拘りは一杯あったのです。

 

1970年代の終わりにVAN Jacketは経営破綻しましたが、その後当時からの熱烈な愛好家達が集まってVANブランドを再興し、今も作り続けています。
今もVANというロゴを見ると、当時の甘酸っぱい思い出が蘇りますね。

 

 

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