今年は7月24日が土用の丑の日でした。当日は鰻屋は勿論、蕎麦屋、日本料理店、デパ地下、スーパー、コンビニ、駅構内等至る所で鰻が売られていましたが、本当に鰻にとっては厄日ですね。
厄日と言って思い出すのは、やはり韓国での土用の丑の日です。韓国版の土用の丑の日は「伏日(ポンナル)」といって、暑気払いのために参鶏湯(サムゲタン)などの滋養食を食べます。伏日は3日あって、早い日付から「初伏(チョボッ)」「中伏(チュンボッ)」「末伏(マルボッ)」で、合わせて「三伏(サムボッ)」と呼ぶのだそうです。
そして、なぜ厄日で思い出したかと言えば、私が韓国に駐在していた1970年代終わりから1980年代初めには、その日に参鶏湯ではなく犬肉を食べていたからなのです。正直欧米人が日本の捕鯨、イルカ漁を非難するのと同様な気持ちを持ちましたし、自分でそれを食べる気には到底なれなかったのですが、永年続く現地の風習を頭から否定するのもおこがましいという気持ちもどこかにありました。
そして現地の人は善意から毎年一緒に食べに行こうと誘ってくれるので、断るのに大汗をかいた覚えがあります。
韓国でも近年では犬食は高齢者に限られ、若い人は殆どが嫌悪感をもって見ているとの事でしたが、今年の1月になってようやく韓国の国会で食用の犬肉販売を禁止する法案が可決されたのだそうです。文化を変えるのは難しいですね。
そして我が家の鰻の話ですが、我が家では元々妻が鰻・穴子を好きではないことから、例年妻以外の分をスーパーやコンビニで買ってきて食べるのが普通でした。
今年は娘が不在で鰻を食べるのは私一人でしたから、久しぶりに鰻屋に食べに行こうと考えたのですが、土用の丑の日の大混雑に突入していく気は毛頭ありません。騒ぎが収まった後の26日、たまに行く成田のうなぎ街道にある「名鳥」という店に行こうと思っていると話したところ、意外にも妻も行きたいと言い出しました。何でも蒲焼のタレの味は好きで、鰻自体は好んで食べたいとまでは言えないが嫌いという程でも無い、というレベルなんだそうです。それは初耳でしたし、そのレベルで高い鰻を食べられてももったいないなと内心思ったのですが、勿論断る理由にはなりません。
そしてその前日知人との会食への行き帰りで息子にその話をしたところ、彼も行きたいと。両日ともたまたま有休を取っていたとの事で、中華のコース、鰻重とちゃっかり栄養補給して帰りましたが、同居しているはずの娘は北海道での友人の結婚式に招かれておりどちらも不参加です。
当日は午前中仕事だった妻と、自分のアパートから直行して来る息子を私が最寄り駅である京成線の宗吾参道駅でピックアップし、そこから5分もかからないところにある「名鳥」には13時前に到着しました。
前日25日は定休日で、最大のイベントである土用の丑の日の営業をやり終え、1日休養を取っての営業再開日だったはずですが、この時点で客は私たちしかおらず、大丈夫かなと思った程でした。座敷に上がって焼き上がりを待っている間に数組の客が来て、私たちが帰る時にはテーブル席は埋まっていましたので、他人事ながら一安心。
注文したのは鰻重で、以前はこれ単品だったのですが、鰻を2倍にしたセットとか、ご飯を蒲焼と分けた鰻御膳とかいう新しいメニューができていました。
うなぎ街道にある鰻屋では「い志ばし」という店が有名ですが、このあたりはどこも庶民的な構えの店ばかりで気軽に入れます。名鳥も全く気取ったところのない店ですが、味は確かだと思いますし、妻も美味しいと食べていましたので、今後は我が家でも土用の丑の日の「前後」には名鳥へ、というイベントが始まりそうです。