我が家の子供2人も家を出て、子育ての記憶も遠くなりつつありますが、彼らが小さい頃には何かとドキドキする経験をさせてくれたものでした。
まず息子は、当時妻の実家があった関西に里帰りしていた2歳になるかならないかの頃、義母・妻・息子の3人でスーパーに買い物に行った帰りに、近くにいたご婦人に大きな声で「バカッ!!」と叫んだことがあるんだそうです。そのご婦人の顔色がさっと変わり、妻があっマズイ!と思った瞬間お義母さんが、関西マダムらしく「まあまあ、すみませんねえ!最近悪い言葉ばかり憶えてそれを使いたい盛りなんです~。子供の事ですから勘弁して下さいねぇ~」みたいな感じで手早く謝ってその場を離れ、事なきを得たのだそうです。お義母さんの話では、妻も幼い頃同じようなことをちょっと強面の若者に対してやらかした経験があるらしく、親子よく似てると笑っていました。母は強し!
娘にも幾つか逸話があって、最初は五反田にあった博多とんこつラーメンの「一風堂」でのことです。ここは多分一風堂が東京で最初に出した店舗で、今は閉店して五反田駅東口の方に移っているようです。
当時は今のようにどこででも本格的な博多とんこつが食べられる状況ではありませんでしたから、家族に本場の豚骨ラーメンを食べさせてやろうと思って、家族4人で訪れたのですが、その頃息子は小学校2・3年、娘は幼稚園の年少か年中だったと思います。
店頭の行列に並んでいた時から、豚骨特有の匂いが漂っていたのですが、案内されたのが大きな寸胴の真ん前のカウンター席で、寸胴からはより強力な豚骨の匂いが押し寄せて来ます。この時も嫌な予感がしたのですが、案の定娘が席に着くなり、大きな声で「お父さん、この店何か臭いよ!臭いっ!!」と叫び出しました。慌てて黙らせたのですが、お店のお兄さんたちも他のお客さんたちも顔を見合わせて苦笑するばかりです。店員さんには申し訳ないと謝るしかありませんでしたが、当の娘はと言えば何事も無かったような顔をして美味しそうにラーメンを食べていました。
他には人形町にある近江牛の有名店「人形町今半」で、「お父さん、ここってお好み焼き屋さん??」と大きな声で叫んで仲居さんや職人さんを笑わせたりということもありました。確かにこの店の鉄板焼きコーナーは、お好み焼き屋さんで鉄板が並んだ光景に似ていると言えば似ていますが、「娘よ、確かにいつもはお好み焼きだけど、今日は大奮発して高いお店に来てるんだよ。」と言いたいところでした。
我が家だけではなく、ご近所でも似たような話があって、妻のママ友の話なのですが、息子さん(我が家の息子の友達)と出掛けていて、二人でエレベーターに乗っていたところ、ドアが開いて一人のご婦人が乗ってきたのだそうです。そしてそのご婦人のメイクが見事なまでの白塗りで、極端に言えば当時流行った志村けんのバカ殿様みたいで、ママ友さんは「なんか言いそう、言うなよ言うなよ、、」と念じていたそうなのですが、祈りもむなしく息子さんは大きな声で「わあオバケ!!」と叫んでしまったんだそうです。
飲食店で娘が叫んだあとの我が家もかなり気まずかったですが、エレベーターのドアが閉まった後の気まずさはその比では無いでしょう。ママ友さんに痛く同情しましたが、同時に子供の無邪気な言動を押さえることの難しさを痛感したものです。
子供が言葉を発するようになる前でも、乗り物の中で火が付いたように泣き出して、どうにも泣きやんでくれないということは誰にも経験があることでしょうし、そんな時は言い聞かせることができない分、更にストレスがかかることになります。
昨日九州から帰ってきた飛行機の中でそれを目撃することとなり、それで以上のようなことを思い出したのですが、飛行機では途中下車もできませんし、ご両親は針の筵に座らされた心境にもなったと思います。
我々夫婦にも同様な経験はありますが、我々にとっては既にある種懐かしい思い出でもあります。しかし当事者であるお父さんお母さんは本当に大変だったでしょうし、今後もそれは続いていく訳です。どうかご夫婦力を合わせて頑張って欲しいものです。