アニメ「チ。―地球の運動について―」をようやく全25話観終えました。
二ヶ月前から観始めていたのですが、想像以上にシリアスな内容だったこともあり、7話まで観たところで中断してしまっていたのです。
舞台は15世紀のヨーロッパ某国で、命を懸けて「地動説」を追い求めた人々の信念と葛藤を描いた歴史フィクションです。原作は魚豊による同名の漫画ですが、私は原作の方は読んでいません。アニメ版はNHKで2024年10月から放送されましたが、私は、今回J:COMを契約したことで視聴できるようになったNETFLIXで観ました。
物語は、神童と称される少年ラファウが異端思想とされる地動説に魅せられ、やがてその思想を受け継ぐ者たちへとバトンが渡されていく壮大なストーリーだったのですが、当初私はこのラファウが主人公として物語を紡いでいくものとばかり思っており、あまりにあっけなく次にバトンが渡されてしまった事に驚いてしまい、展開についていくのが大変でした。そのあたり物語の序盤でいきなり主人公のエレンが巨人に喰われてしまい、今後どうなるんだと途方に暮れた「進撃の巨人」と似たところがあります。
登場人物たちは、強烈な(カトリック?)教会からの弾圧や社会的抑圧の中でも、自らの信念を貫こうとします。ですから、彼らの姿には「血」をも顧みず前へ進むという意味もあり、「知」の追求、地動説の「地」と共に、3つの意味を持つ「チ。」だということになります。この作品の魅力は、単なる歴史再現ではなく、「なぜ人は知を求めるのか」「信じるとは何か」といった重いテーマを、一人の主人公ではなく時代や立場の異なる複数の視点から描いている点にあり、登場人物たちは皆、迷ったり、恐れたり、時に逃げながら、それでも「真理」を求めようとしていて、決して英雄ではないその姿が感動を呼びます。
また、女性蔑視の時代にあって必死に真理を追究しようとした女性天文家の姿も感動的でした。
我々は地動説と言えばコペルニクスを連想しますが、ここに登場する彼らはコペルニクスが活躍する16世紀よりも前の15世紀に、天動説を疑い教会や社会からの迫害に耐えながら地動説を証明しようとした人々で、後世コペルニクスを生むことになる思想・理論の提唱者たちと言えると思います。物語の最後の場面ではコペルニクスが紹介される場面もあります。
このアニメのオープニング曲は、サカナクションの「怪獣」ですが、この曲は「チ。」の放映が2024年10月にスタートしてからも長らくTVサイズしか完成しておらず、フル尺が完成したのは2025年の1月25日に始まった彼らのツアー直前だったのだそうです。
結果大ヒットとなったのですが、作詞を担当した山口一郎は、うつ病に向き合いながら苦闘の日々を過ごしており、再び仲間と共にバンドを走らせ始めたその軌跡がNHKスペシャルでも2度にわたってドキュメンタリーとして描かれました。それもあって待っていた人は多く、その期待が反響につながったのかも知れないと解説されていました。