周防柳という作家の「身もこがれつつー小倉山の百人一首ー」という時代小説を読みました。
ここしばらく吉田修一の作品に嵌っていたのですが、「横道世之介」という小説の主人公の名前が「好色一代男」と同じである事が作品中でも触れられていましたので、再度読み直そうとして検索した時に、この周防柳が「うきよの恋花 好色五人女別伝」という小説を書いていることを知り、彼女の作品をまた読んでみようと思い立ったのです。
周防柳は、「蘇我の娘の古事記(ふることぶみ)」から始まって、「高天原-厩戸皇子(うまやどのみこ)の神話(かみばなし)」「逢坂の六人」と時代小説ばかり読んで来て、かなり面白かったのですが、当時文庫化されていたのは確かこれだけで、今回この作品も文庫化され、しかもKindleにもなっていたので読むことにしたのです。
ただ好色五人女は、「お夏清十郎」や「八百屋お七」題材にした、これも井原西鶴の好色シリーズの一つですが、こちらにはあまり興味はありませんのでパス、また彼女には現代小説もあるのですが、書評などを読む限りでは少し興味の対象ではないように感じましたので、当面は時代小説に限って考えています。
この作品は、平安・鎌倉期を代表する歌人、藤原定家が主人公で、彼は「新古今和歌集」の編者として有名ですが、表題の「小倉百人一首」の編者とも考えられていて、定家が京都・小倉山の山荘で、知人からの依頼に応じて、色紙に和歌を書いて座敷に貼ったのが始まりとされ、この百首の歌が後にまとめられて「小倉百人一首」と呼ばれるようになったのだそうです。
ただ定家自身の著作には百人一首を編んだという記録は無く、本人編纂説が現在までの通説で「小倉百人一首」の名もこの説に基づくのですが、定家の撰集をもとに後世に成立したという説や「百人一首」は定家とは直接関係なく、鎌倉後期以降に小倉山荘伝説と結びつけられたという説もあり、学説も分かれているようです。
藤原定家は平安・鎌倉期の代表的歌人であり公家ですが、そこから連想されるようなパリっとした貴公子とは描かれておらず、そこから既に引き込まれました。定家とは対照的な美男子である親友と、後鳥羽上皇との三つ巴の関係が「和歌」を通じて描かれるのですが、誰もが一度は聞いたことのある有名な歌が次々と出て来ますので、とても興味深く読み進めることが出来ました。
更にこの小説の時代背景は、貴族社会である平安時代が武士社会である鎌倉時代へ移行する激動期であり、力でそれを成し遂げようとする武士層と、それを阻止しようとする後鳥羽上皇を頂点とする貴族層の、権謀術数を尽くした闘いがダイナミックな解釈で描かれ(そのクライマックスが「承久の乱」です。)、かなり面白い時代小説だったと思います。
これでまた周防柳熱が再発したのですが、彼女の時代小説はまだ他には文庫化されていませんので、しばらくおとなしくしておくことにして、代わりに彼女の「小説で読みとく古代史」という歴史解説書を読んでみることにしました。
そしてそこで紹介されていた、永井路子の「茜さす」という小説に興味を持ったのですが、これは時代小説ではなく現代女性(といっても昭和期)が飛鳥時代特に額田王に心惹かれることから始まる小説です。Kindle Unlimitedという読み放題プランに入っていたので覗いてみたところ面白そうでしたから、これも並行して今読み始めています。



