十和田プリンスホテルで迎えた二日目は生憎の雨予報で、午後になると降水確率も100%でしたから、十和田湖・奥入瀬観光はクルマで走りながら眺めるだけにして、その代わり小坂町の市街地見物に行くことにしました。




朝の内はまだ晴れ間もありましたので、ホテルを出たらまず十和田湖の周りを時計回りに走って、北岸にある展望台から十和田湖を眺めたあと小坂町の中心部に向かうことにしました。
湖の周囲ではまだ殆ど紅葉は見られませんでしたが、標高約千mの御鼻部山(おはなべやま)展望台付近まで来るとかなり紅葉も進んでいて、思わぬ紅葉見物もできました。





プリンスホテルの所在地も同じ小坂町内なのですが、小坂は銅の鉱山として大変栄えた街で、三大銅山と言えば足尾銅山、別子銅山、日立鉱山というのが一般的であるものの、日立鉱山の代わりにここ小坂鉱山をその一つとすることもある程の規模だったんだそうです。
ここには昨年夏の奥入瀬・十和田・八甲田ツアーで昼食に立ち寄っていて、その時鉱山でとても栄えた街だという説明を受けたのですが、それまでは全く知らない街でした。
ただその時に、絶頂期には東京にも負けない先進都市・理想都市と言われ、従業員の娯楽施設として「康楽館」という演芸場まであったという事を聞いていて、今回ここまで来たのならこの康楽館にでも行ってみるかということになったのです。
十和田湖から前日来た道を逆戻りして、40分程で小坂町中心部に到着しました。康楽館に行く前にまず目についた「小坂鉄道レールパーク」というところに立ち寄ったのですが、想像以上に立派な鉄道遺産が展示されていて楽しむことが出来ました。
以下は小坂鉄道の説明ですが、
小坂鉄道は小坂鉱山で産出される鉱石や木材を輸送するために20世紀初頭に開業した大館までの約20kmの私鉄路線で、開業の翌年には旅客営業も開始されて地域の重要な交通手段となりました。昭和中期にはディーゼル化と軌間の改軌で輸送力を強化しましたが、1994年に旅客営業を終了し、2009年には全線廃止されました。現在は「小坂鉄道レールパーク」として保存され、歴史的遺産として親しまれています。
という施設で、ここに保存されているJRのブルートレイン「あけぼの」のB寝台・A寝台は列車ホテルとして週末には宿泊もできるようです。







小坂鉄道レールパークを出る頃から本格的に雨が降り始めましたので、前回ツアーの昼食会場でもあった「青銅館」で先に食事としました。いわゆる洋食屋さんですが、しっかりした味付けでとても美味しかったです。
小坂鉱山は「黒鉱」という海底火山の熱水活動によって形成された、銅・鉛・亜鉛などを含む黒色の硫化鉱石が多く産出されたのだそうで、イカ墨を使って黒く仕上げた「黒鉱カレー」などの黒メニューもいくつかありました。


その後は康楽館のとなりにあった「小坂鉱山事務所」にも立ち寄ったのですが、往時の繁栄を偲ばせるとても豪勢な社屋でしたし、展示物も充実していました。
康楽館の方も鉱山と同じく、香川県琴平町の「金丸座」や愛媛県内子町の「内子座」と並び称されて「日本三大芝居小屋」や「現存三大劇場」の一つと言われているのだそうです。芝居興業が行われている最中でしたから劇場内の写真は撮れませんでしたが、ハイカラな外観とは違って場内は純和風で、奈落の雰囲気や人力で回す回り舞台なども江戸時代に建てられた金丸座とよく似ていました。









小坂鉱山は三大鉱山の一角でもあり、往時の豊かな財政をバックにして作られた各種の施設は、産業遺産としてとても高いポテンシャルを持つ観光資源だと思います。単に私が知らなかっただけなのかも知れませんが、その割には小坂町自体の知名度は低く、持てる力を生かし切れていないのはもったいないと思いました。
ここから八戸まで向かうのにナビが指定してきたのは高速を使うルートでした。
当初は十和田湖まで戻って奥入瀬渓流を見物しながらと思っていて、八戸まではそれが最短距離でもあると思うのですが、かなりの雨足でしたし十和田湖も朝イチで眺めて来ましたので、ここはナビに従うことにしました。道中も強い雨が降り続き、観光どころではない状況でしたから、結果オーライだったかも知れません。