長澤まさみ主演の「おーい、応為」という映画をアマゾンプライムで鑑賞しました。
そもそも長澤まさみという女優が好きですのでこの映画にも興味を持ったのですが、葛飾応為という人物をとても丁寧に描いている作品でした。
この映画は、原作が飯島虚心の「葛飾北斎伝」と杉浦日向子 の「百日紅」で、2025年10月に公開され、2026年2月10日にアマプラでの見放題が始まりました。つまり劇場公開から約4か月後に見放題化されたことになり、これはとても早いサイクルに感じます。通常は劇場公開から2~3か月後にデジタル先行レンタル、4~6か月後にDVD発売・有料レンタル、さらに3〜6か月後サブスク見放題、という感じのようですから、この基準で見ると、最速クラスで見放題まで来たことになります。
では人気が無かったのかと言えば必ずしもそうとは言い切れません。
理由としては、
1.「独占見放題契約」がある場合、配信時期が前倒しされることはよくある。
2.時代劇、女性絵師の静かな物語、大規模宣伝をしない中規模作品という本作のような映画は、興行収入が伸びにくいタイプでロングランになりにくく、興行が落ち着いた段階で早めに配信へ切り替えて二次収益を確保するのは一般的な戦略。
3.2025〜26年はアマプラが邦画の独占配信を積極的に進めており、公開後4〜5か月で見放題化される例が増えている。
などが考えられるようで、
とすれば、「人気がなかったから」ではなく、上記の要因が重なって結果的に「最速クラス」で見放題になったと考えるのが自然ですね。
私は応為についてほとんど知識がなく、最初名前を聞いてもすぐには結びつきませんでした。葛飾という姓を見て葛飾北斎の縁者だろうと想像はつきましたが、北斎をはじめとした浮世絵が好きな妻は、応為という名前だけですぐにわかったようです。
ただ、妻はまだこの映画自体は観ていないので、私が先に触れた形になります。
応為は葛飾北斎の三女とされる人物で、本名はお栄、北斎の仕事を手伝いながら自身も美人画や肉筆画で高い評価を受けましたが、史料が少ないため長く「北斎の娘」という位置づけで語られてきました。記録も少なく、生涯の詳細はよく分かっていないらしいですが、浮世絵画家としての評価は近年になって大きく見直されており、現存する作品を見ると、光の表現や陰影の扱いに独自の感性があって当時としては非常に先進的だと評価されています。代表作とされる「吉原格子先之図」は作中にも登場し、行灯の光や夜の陰影を巧みに描き分ける技術が際立っていて、江戸の浮世絵でここまで光源を意識した表現は珍しく、「光の絵師」と呼ばれることもあるのだそうです。
この映画は、ドラマティックな展開が続くタイプではなく、淡々とした流れの中で応為の姿を描いていきます。派手な盛り上がりはありませんが、その静けさがむしろ彼女の内面をよく映し出していて、観ているうちに自然と気持ちが通じるような感覚がありました。光の絵師とも呼ばれる応為を意識しているのでしょうが、光と影の使い方もとても巧みで、説明に頼らず画面そのものが語る構造になっている点も印象的です。
そして長澤まさみの演技もとても良かったです。ふとした表情にも端正な美しさが現れますし、この作品ではおきゃんな江戸娘(出戻りですが)の素顔、芸術家らしい繊細な心、そして純情な女心などを派手な表現に頼らず丁寧に表していて、作品全体の落ち着いた感じに溶け込んでいたと思います。破滅型の芸術家である北斎を演じた永瀬正敏も好演でした。