フグ料理のチェーン店である「とらふぐ亭」では、今「30周年・創業当時の価格フェア」 を開催しています。当初は4月末までの予定だったのですが、好評のようで5月末まで延長されましたので、季節外れではありますが、久しぶりにフグを食べに行くことにました。
フグは古くから食べられてきた魚ですが、中毒事故が多く、江戸時代には藩ごとに食用禁止令が出され、明治期には軍での事故をきっかけに全国的に禁食となったこともあったのだそうです。
その後、山口県が部分的に解禁へ踏み切りましたが、これは下関が古くからフグの水揚げ港であり、食文化としても根強く残っていたためで、下関では専門の料理人が技術を受け継いでいたことから、行政も「熟練者による処理なら安全性が保てる」と判断して、これが現在のフグ調理免許の枠組みにつながったとされています。
1980年代には、フグ毒が餌由来の外因性だと考えられるようになり、無毒化養殖の試みが始まりました。1990年代には、海面いけすでは巻貝など毒源生物を摂食してしまい無毒化は難しいことが判明し、環境を完全に管理できる陸上養殖となりました。そして2000年代になって長崎大学と熊本県天草の水産会社が共同で無毒化技術を確立し、商業生産が始まったのだそうです。
ただ、毒が発生する仕組みには未解明の部分が残っていて、特に肝臓の安全性は保証できないと行政が判断しているために、肝臓の提供は全国で禁止されたままです。このため、無毒化フグであっても制度上は通常のフグと同じ扱いとなり、飲食店で提供するにはフグ調理免許保持者による処理が必要なんだそうです。
昔話ですが、大分県の別府地方には肝ポン酢で「てっさ(ふぐ刺し)」を食べさせてくれる店が普通にあって、これがまた大層美味だったのです。平成期(私が食べたのもこの頃です。)までは存在したのですが、今は上記の通り全面禁止となったのだそうです。また一度食べたいと思っていたのですが、今や幻ですね。
そしてフグが年中手頃に食べられるようになったのにも、この養殖技術の発達が大きく関わっており、天然物には冬という季節性がありますが、養殖フグは一年を通して安定して出荷されます。高級店では天然物を看板にしている一方で、フグ毒の危険性と隣り合わせのため、天然=価値という単純な図式にはなりにくく、むしろ安全性の面では養殖が優位とも言えますので、近年は高級店でも用途に応じて使い分ける動きがあるようです。
関西では明治以降に下関からの流通が発達し、大阪を中心にてっちり文化が外食として根付きましたので、冬のごちそうとしての位置づけが早くから確立し、現在まで安定して受け継がれています。一方、関東では江戸期の禁食令の影響が長く残り、フグは特別な料理として扱われて、外食でも関西ほど浸透しませんでしたので、結果として、フグ料理は関西で広く定着し、関東では限定的な広がりにとどまっているのだそうです。関東は鰻、関西はフグだなとずっと前から感じていたのですが、納得です。
とらふぐ亭は全国で39店舗展開していて、千葉県北西部には松戸と本八幡の2店舗があり、今回は松戸駅の西口にある松戸店に行って来ました。
開店早々の17時に予約を入れて一番に入店、皮刺し・泳ぎてっさ・泳ぎてっちり・なべ皮・とらふぐ唐揚げ・雑炊・香物・デザートというコースに白子のポン酢和えを追加して楽しんで来ました。
フグの身は「淡泊でありながら非常に濃厚」と表現されるそうで、脂肪分が少なくクセがない一方で、旨味も十分感じられます。他の白身魚とはちょっと違う上品な味わいとでもいうのでしょうか。コリコリとした強い弾力と、歯ごたえも醍醐味でしょうね。








