シニアライダーの日常・R1200Rと共に

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冲方丁「月と日の后」を読みました。

 

冲方丁の作品つながりで読み始めた「月と日の妃」は、全く予備知識もなかったのですが、偶然現在NHKの大河ドラマ「光る君へ」の主人公紫式部も登場する、藤原氏の栄華・権謀術数を描いた小説でした。
「光る君へ」には全く興味がなかったのですが、この小説を読んだおかげで、これからでも追っかけで見てみようかという気になってきました。
NHKプラスで2週間は見逃し再生ができるのですが、既に2カ月9話まで進んでいますから、NHKオンデマンドで有料視聴するしかないのでしょうか。

 

 

 

また時代背景も、この前に読んだ周防柳の「逢坂の六人」と同じ平安朝で、主人公だった紀貫之の少し後、紫式部や清少納言の時代ということで、すんなり読み進めることが出来ました。
主人公は一条天皇の皇后、藤原彰子(ふじわらのあきこ)で、「この世をば わが世とぞ思ふ望月の かけたることも なしと思へば」という望月の歌で有名な藤原道長の長女です。
現代の女性の名前は通常訓読みですから、「ふじわらのあきこ」の方が自然なのですが、本作では「ふじわらのしょうし」、他の女性も同様に全て音読みで統一していましたのでそれには少し違和感がありました。

 

そして紫式部は彰子皇后の女房として登場します。一条天皇の皇后彰子と言っても知る人は少ないでしょう(私もそうでした。)が、かたや紫式部の名声は圧倒的で、「光る君」でも主役は紫式部です。ただこの小説では、紫式部は皇后を支える渋いわき役として描かれているのが新鮮でした。

天皇の后となるために後宮に入り、天皇の愛を受けて天皇候補になる男子を生むことができるかどうかによって、その女性の実家の男たちの運命が決まるという時代で、上級貴族の家に生まれながら(生まれたからこそ)、殆ど道具として扱われる女性たちの悲哀と権力への執着が描かれます。
彰子の場合は更に状況が複雑で、嫁いだ時、一条天皇は20歳位で、既に定子(ていし)という最愛の妃がおり、そして彰子は当時まだ12歳の子供。しかも、定子の父親は藤原道隆で、彰子の父親はその弟藤原道長ですから、娘たちは兄弟同士の権力闘争の犠牲者でもあったのです。

 

藤原氏といえば望月の歌の通り、摂関政治の中心にあって栄華を独占したという印象が強いですが、一族内の権力闘争もすさまじく、その闇、怨念、陰謀が渦巻く宮廷は決して雅な貴族の住処としては描かれていません。
幼すぎて父に利用されるだけだった内気な少女が、いかにして「国母」として信頼され、長く慕われる存在となったのかを丁寧に描いていて、日頃馴染みのない単語がポンポン出て来るのですが、さほど苦にせず読み進むことができました。

 

この次には、同じ冲方丁の「はなとゆめ」という小説が控えています。
この本は以前から知っていたのですが、娘が子供の頃読んでいた「花とゆめ」という少女漫画雑誌の印象がとても強くて、その手の小説なんだろうと勝手に思ってこれまで敬遠していました。
ところが今回「月と日の妃」を読んで、「はなとゆめ」は彰子のライバルでもあった定子の女房、清少納言が主人公だと知り、早速購入することにしたのです。
「逢坂の六人」から3作続いて平安時代の宮中を描く小説を読むことになります。

 

 

 

 

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