「猫なんてよんでもこない。」という漫画をご存じですか?
杉作というボクサー志願だった青年が書いた猫漫画ですが、2000年頃、当時毎号購読していた、「週刊モーニング」に連載されていた「クロ號」という作品の続編のような漫画です。
若い頃から漫画が好きで、もう40歳を過ぎて妻子持ちとなっていたこの頃も、流石に少年誌は卒業していたものの、青年誌は定期的に買っていました。週刊モーニングはその中の一冊で、「クロ號」という漫画は、飼い主(拾い主)である「ヒゲ」と、捨て猫だった「クロ(兄)」「チン子(妹)」の生活をクロの視点で描いたものです。「吾輩は猫である」の手法をとった漫画ですね。
ほのぼのした絵柄のとおり彼らのドタバタな共同生活(クロの視点でいうとむしろヒゲは召使い、、)をユーモアたっぷりに描いているのですが、野良猫たちのシビアな現実や、人間の身勝手さ、生と死、ということからも目を背けず描いている漫画なので、読んで毎回幸せになるとはいえません。読後に何ともいえない苦さや重さをそれこそ一週間引きずることもあったと記憶しています。
愛猫家の皆さんからすれば信じられないような猫への無知や無理解、偏見が随所に登場しますので、これだけで拒否感を示す方も多いと思います。猫嫌いだった作者が徐々に猫たちとの信頼・愛情を育んでいくストーリーですので、特にまだ作者が猫に愛情を感じられない冒頭部分には、嫌悪感を抱く愛猫家も多いでしょう。
でもきれいごとでない野良猫の世界は作者の描く通りでしょうし、中途半端な愛猫家の私なんかが目を背けている部分にもちゃんと向き合っている、良質な猫漫画だと思います。
そんな漫画でしたが、連載が終了して10年程経ち、週刊漫画を定期的に購読する習慣も徐々になくなってきた頃、書店でこの「猫なんかよんでもこない。」を見つけました。杉作という名前と絵柄で、すぐにクロ號の作者だとわかりましたので手に取ってパラパラめくってみると、当時読んだストーリーを思い出してきました。
登場人物である召使い(?)の「ヒゲ」が、弟の「杉作」に変わっています。というか、そもそもこの兄弟はアパートで同居していて、「クロ號」の時は作者である弟が、自分は漫画には登場させず、兄貴の「ヒゲ」と2匹の猫のストーリーとして描いていたものを、現実に即して描き直したもののようです。
ですから前作の「クロ號」とかぶる部分もありましたが、徐々に妹の「チン子」が主役となってストーリーは展開します。「クロ號」と同様に、涙も笑いも、という作風は変わらず、当時発行されていた2巻まで読み終えました。その後数回の書籍・コミックの整理の際にも何故か処分されず、本箱に残されていましたが、最近になってたまたまこの漫画を手に取ってみたところ、新しい主役の「チン子」が下の表紙の通り白黒のハチワレ猫で、我が家の愛猫「ロク」と同じだったことに気付きました。
そんなことで興味が再燃して読み返してみたのですが、やはり笑いと涙ということになり、その後3~5巻まで発行されていることがわかってKindleで電子版を購入、更には昔読んだ「クロ號」全9巻まで勢いで購入して、一気に全部読んでしまいました。そして、前作の「クロ號」という作品名には意味があったことも今回知ることになり、それにも感動させられました。
実写による映画版も作られているのですが、こちらは低評価が多いですね。Amazon等での配信もされていませんので見る機会がなく、私自身評価はできませんが、綺麗ごとで猫の虐待とか言っている人が多いような気もします。原作を読んでから映画を見れば、違う印象を持つ人も多かったのではないですかね。