自分ではこれまで全く意識していなかったのですが、私は「あれ見て」とか「あの人何してるんだろう?」とか言う時に、何気なくその対象の物や人を指さす癖があるみたいです。最近特にその傾向が強まっているようで、家族で出かけている時など、家内や娘からはその度に「ホント止めて!」と怒られます。
確かに後ろ指をさすとか、さされるという言葉もあって、特に人を指さす行為にはいい印象はありませんし、相手に尊敬とか愛情を感じている場合は指さしたりはしないですね。自分が指さされた記憶も、子供の頃なら親や先生から、大人になってからは職場の上司からこっぴどく怒られている時くらいですか。
指差しという行為は、相手に不快感を与えるから失礼だとかマナー違反だとかされるようになったのでしょうが、人を指で差してはいけないというのはまあ常識だとしても、物や空間に対する指さしも不愉快に感じる人がいて、家内や娘もそこに含まれます。
そして人の事を指で指すのは、日本だけではなく海外でもやはり共通のマナー違反だそうですから、どの国でも不快と思われる行為なんだということを意識して、しないように心掛けなければいけないですね。ではどうしても人をさす必要がある時はどうすればいいかというと、手のひらを広げて手のひらを上にして相手を指すのがほぼ共通の正しい作法なのだそうです。でも、改まった場でもない限りちょっと仰々しい気はします。
そもそも指さしというのは赤ちゃんの発達過程では必須のもので、8~10カ月くらいから共同注意という「もの」や「できごと」に対する興味を他の人と共有することとして出てくるものなのだそうです。たとえば赤ちゃんが「ほら見て!」という気持ちで、指差しをするときには、自分が興味を持っているものを、おかあさんなどに伝える、おかあさんの関心を引きつける。おもしろいとか、きれいとかいう感情を共有する、というような意味があり、赤ちゃんが指差しをしたときは、お母さんも「あら、そう」「かわいいね」など、話しかけながら反応を返してあげるとよいのだとか。
このように赤ちゃんにとっての指差しは大人にとってのおしゃべりと同じで、「指差ししたものをちょうだい」と要求するような意味を持つこともあり、人間として成長、発達し、適切に能力が身につけば、目立つ指差しの行動は見られなくなっていきます。そして指さしは、このように赤ん坊が直情的に使うコミュニケーションなので失礼とされ、マナー上禁止する文化も出てくる、ということだそうです。
結局、未だに指さしの癖が抜けない私は、この歳になっても人間としての適切な成長、発達をしていない、ということになりそうです。何だか情けないですね。
しかし、そもそも日本語では「人差し指」と言いますし、これは英語でも同様で、人差し指は「ポインター・フィンガー、Pointer finger」とか「インデックス・フィンガー、Index finger」と呼ばれるのだそうです。ポインターはそのままですが、インデックスにも目印、指数などという訳語もありますから、人差し指は文字通り「指さし」する指だったことになります。
また一方では、製造現場や運輸の世界では安全確認のための「指さし確認」がやかましく言われます。日常私たちが目にするのは、駅のホームでの駅員さんや車掌さんの指さし確認で、これは日本人では不快に感じない人が多いと思うのですが、それは安全確認という背景を知っているからで、外国の人にはまた違った印象を与えるのかも知れませんね。