シニアライダーの日常・R1200Rと共に

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ルトガー・ブレグマン著「Humankind 希望の歴史」を読みました。

 

オランダの歴史家、ルトガー・ブレグマンが書いた「Humankind 希望の歴史」という本を読みました。先日ミヒャエル・エンデの「モモ」の記事で書いていた、今読みかけの本というのはこれの事でした。
私はこの本をKindle版で読んだのですが、単行本なら2巻、それぞれ300ページ弱とまあまあの長編です。内容はサブタイトルにもある通り、明るく希望の持てるものなのですが、何せ真面目な内容なので、結構読み終えるのに時間がかかってしまいました。読書する力というのも歳とともに落ちてくるんだなあと実感しています。

 

この本は、勝間和代さんという評論家のブログで知りました。彼女は一時期マスコミにも頻出し注目された人でしたが、その頃社員教育でお世話になっていた経営学の大学教授が結構彼女の言動に批判的だったので、かえってその時に興味を持ったのです。また、彼女はとても小柄な体格なのに、頑張って大型バイクに乗っていて、それも親近感を持った理由です。単純ですが、、。

 

 

 

人類の本性は本当に悪なのか?人類は地球を滅ぼしてしまうのか?いやそうではないだろう、というのが本書の趣旨で、ですから「希望の歴史」である訳です。

 

自分は知的階層に属していると思っている人ほど、そして人間の歴史や哲学に詳しいと思っている人ほど人間の本性に対して懐疑的で冷笑的だ、というのは全くその通りだと思います。性悪説、ベニヤ板説(人間はベニヤ板ほどの薄い文明・教養という皮をはがせばたちまち、野蛮で攻撃的な本性を現す、という考え)が身にしみ込んできているのでしょう。
私は知的階層でも、歴史・哲学・生物学などへの造詣が深い人間でもありませんが、人間の本性は善だと主張すると、周囲から、お前はおめでたい人間だなあとか、頭の中がお花畑なんじゃないかとか言われそう、という雰囲気は感じていました。
この、頭の中がお花畑という言葉はいわゆる右翼の人が、軍備に反対する左翼を揶揄するときにも使われますね。

 

この本では、人間は本来利己的だ=性悪説、本来利他的だ=性善説、として使われていますが、本来の意味での性悪説は、中国の思想家荀子が、孟子の性善説に反対して唱えた人間の本性に対する主張で、悪=罪・犯罪というよりは、人間とは弱い存在だ、という意味だったみたいです。

繰り返しになりますが、リチャード・ドーキンスという英国の学者が執筆した『利己的な遺伝子』や、やはり英国の作家ウイリアム・ゴールディングの小説「蠅の王」などに代表されるように、近代は性悪説を前提としてきていて、「普通の人間は、たやすく邪悪な存在に変わりうる」というのが定説になっています。また、このような人間観を長らく裏付けてきた数々の実験が存在していて、中でも有名なのは、1971年に米国のスタンフォード大学で行われた有名な心理学実験「スタンフォード監獄実験」ですが、ブレグマンはその信憑性に異議を唱えます。そしてその他の有名な研究や実験にも一つ一つ反証を加えて、人間は本来利己的な存在ではなく利他的なのだという主張を繰り広げていきます。

 

勿論ブレグマンの主張はそんな単純な二元論ではありませんし、双方の主張のどちらが正しいとか断じる力も私にはありませんが、少なくともこの主張を信じる方が明るい気分になるのは事実です。
以前読んだ「サピエンス全史」の著者ユヴァル・ノア・ハラリとも対談をしたりしていて、随分考え方の違いはありますが、相通じるところもあって、時間はかかりましたが最後まで興味深く読めました。

 

 

最後に余談ですが、私は今はKindleでの読書が主体で、この本もそうでした。今回のブログを書くにあたっては、あれどうだったかな?と読み直す必要が何度か出てきたのですが、そういった際、Kindle等の電子書籍は紙に比べて著しく不便だということを今回痛感しました。紙だと大体のページに当たりを付けてからパラパラとめくって、ああここだったと比較的簡単に見つけられるのですが、電子書籍はそれがとても苦手です。数枚のページを一覧できる機能もあるのですが、表示が小さすぎて余り役に立ちません。何かいい方法があれば知りたいところですが、新聞を電子版で読んでいた時にも同じような感想を持っていて、見出しだけをざっと拾い読みするには、紙の新聞を広げるのが一番でした。

 

 

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