遺憾ながらコロナに感染してしまい、自宅療養を余儀なくされた一週間でしたが、熱が高いと目で活字を追うという気力も起きず、かといって始終うとうとしているので本格的な眠りも訪れず、という時にAmazonのAudible(オーディブル)には30日間の無料体験版があったことを思い出しました。
目を閉じていても勝手に本を読んでくれるというのは今の自分にはぴったりだと考えたのですが、何となく選んだ「ザリガニの鳴くところ」という作品が面白かったこともあって、比較的熱が高かった最初の3日間かなり役立ってくれました。
全世界で1,500万部も売れた大ベストセラーだということも、映画化されていることも知りませんでしたが、ミステリーとしては、リチャード・ギアの「真実の行方」や「ゴーン・ガール」に近いかも知れません。
映画版の公式サイトには「ストーリー」というあらすじ的な欄があったのですが、これには個人的には少し違和感がありました。映画版を観てみないとはっきりとはわかりませんが、主人公などの人物紹介の視点が私の聴取後の感想とはちょっと違っている気がします。
話の舞台はノースカロライナ州の湿地帯で、ここがザリガニが鳴くところなのですが、最後の場面に現地保安官が使うエアーボートが登場します。
ここで私は、幼い頃夢中になって観ていた「ジャングル・パトロール」という米国TVドラマを思い出しました。調べてみるとこの番組の舞台はフロリダ州で、ノースカロライナ州より更に南の湿地帯だったようですが、主人公の保安官が乗り回すエアーボートがとてもカッコよかったんです。
こんなやつで、スクリューも舵もありませんから、湿地・沼地は勿論、多少の陸地でもすっ飛んでいきます。
オーディブル版はプロが朗読していますから、感情移入も上手で、昔のラジオドラマというのはこんなんだったんだろうなと感じます。年寄りの私ですが、ラジオドラマに聞き入るという時代にはさすがに間に合わなかった世代です。
ただその分、読み進みはかなりゆっくりとなり、通常再生なら何と17時間弱もかかります。暇を持て余した今回の私には問題なかったのですが、黙読なら2~3倍の短縮になる気がします。勿論オーディブルには再生速度調整の機能もあり、0.5倍から3.5倍の間で調整することができるのですが、試しに2倍にしてみると、とても聞き取れたものではなく、しかも早回しのキンキン声になりますから声優さんの感情移入も台無しです。私の場合は1.25倍から1.5倍が限界で、しかも山場では臨場感を損なわないようにいちいち通常再生に戻したりもしていました。
単行本でも500ページ程の本として販売されているようですが、その程度なら没頭すればやはり5~6時間もあれば読めてしまうと思います。
こう考えると、黙読でざっと活字を追っていくという視覚機能は大したもので、視覚と聴覚の情報量の差を実感しました。だからこそ、画面を眺めたり活字を読んだりというのは、脳の活動も膨大になって「疲れる」、という事なのでしょう。
今回コロナ療養中、オーディブルは「ザリガニの鳴くところ」というコンテンツの面白さもあり、とても役立ってくれましたが、さて今後もオーディブルを利用するのかとなるとちょっと微妙で、無料期間終了後に更新することはおそらくないでしょう。
今後の日常生活の中では、クルマの運転中というのが一番ありそうな利用法だと思いますが、音楽と違って朗読の場合は意識をそちらに引き込まれそうで、聞きながら運転は危険な気がします。
その他でも、ながら作業的な利用法はあり得ますが、時間がかかるのも大きな問題で、細切れに何度にも分けて読んで(聞いて)いると前回までのストーリーが飛んでしまうというのは、通常の読書でも良くある話ですが、その際本のようにパラパラとめくって筋をおさらい、という事が出来ません。これはkindle等の電子書籍の弱点でもあるのですが、この点紙の書籍はやはり偉大です。