マット・デイモン主演の映画「グリーン・ゾーン」をAmazon Primeで観ました。マット・デイモンがお気に入りだという事もありますが、この映画は先日観た「記者たち 衝撃と畏怖の真実」という映画とも関わる内容だと知って興味を持ったのです。
このポスターの「114分間、あなたは最前線に送り込まれる。」というコピーを見て戦争映画を想像して観た人は肩透かしを喰らうでしょうね。戦争映画と言うよりは社会派映画だと思いますし、つまらない、というレビューはそういう人が多いのかなと思いました。
またこれが実際のイラク戦争を題材に、ずっとフセインを追放したかったアメリカ政府が、9.11テロをきっかけに大量破壊兵器を隠匿しているという疑惑をでっちあげて、イラク戦争を仕掛けたという内幕を描いたもの、という知識もあった方が楽しめると思います。
そういう意味では、私が「記者たち 衝撃と畏怖の真実」を観てからこれを観たのは正解でした。同じくイラク戦争を題材として、「記者たち 衝撃と畏怖の真実」はアメリカ国内で、本当にこの戦争に大義はあるのかを探し続ける記者の話であり、この「グリーン・ゾーン」はその結果として戦争の前線に送り込まれた兵士たちの物語です。
また題名の「グリーン・ゾーン」は軍事用語での非戦闘地域から来ているのでしょうが、連合軍本部が置かれたバグダッド中心部「グリーン・ゾーン」のフセイン大統領宮殿はまるで高級リゾートホテルで、プールサイドではビキニの女性たちが寛いでいます。そんな安全な場所から兵士たちに指令を出す高級幹部は、「記者たち、、」で描かれた、兵士を戦場に送る側の人々であり、戦いの直後の戦闘服でここを訪れたマット・デイモン扮するミラー准尉たちは兵士として送り込まれた側の人間です。
マット・デイモンが演じる主人公は、イラクが秘匿しているとされる大量破壊兵器の発見を命じられた部隊の指揮官で、与えられる情報に基づいた出動がことごとく空振りに終わることで疑念を持ち始めます。映画を見ている方は、既に大量破壊兵器など存在しなかったことを知っていますから、そこにミステリーの要素は多くはありません。この映画を見て強く感じるのは、偽の情報を基に根拠のない戦争が始まり、それによって前線に送り込まれた兵士達の不幸と、それにも増して、意味なく攻め込まれた側の一般市民の不幸です。
マット・デイモンは好きな役者で、最近では「フォードVSフェラーリ」を観たばかりです。「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」以来のファンですが、そんなに映画通でもなく、彼の作品全てを観ている訳ではありません。しかしグッド・ウィル・ハンティングではまだ少年の面影を残していた彼も、今や男臭さに溢れる、アメリカ映画界を代表する俳優となりました。
家内もこのグッド・ウィル・ハンティングは好きな映画だと言っているのですが、彼女の御贔屓はロビン・ウィリアムスで、彼が自殺してしまった時には大層悲しんでいました。
ここに登場する、ウォール・ストリート・ジャーナルの女性記者は、現実にはワシントン・ポストの大物記者ジュディス・ミラーなのですが、名誉棄損等のリスクをさけるためなのでしょうか、紙名も名前も変えています。
これは20年近くも前の話ですが、今のアメリカでも政権の都合ででっちあげられた戦争が始まってしまう可能性は否定できないなあと感じてしまいます。勿論アメリカに限った話ではありませんが、世界中のどこにでも兵士を派遣して戦争が始められる国と言うのは限られてきます。