前回「ミニ胡蝶蘭が2年越しに花を付けました。」というタイトルのブログを書いたのですが、ふと「2年越し」という表現で合っていたのかが気になりましたので、少し調べてみました。
今回の場合は、昨年花をつけ一度花が落ちた胡蝶蘭が今年になってまた花をつけた、というのが時間関係ですから、「1年経過した」という言い方でも良いのでしょうが、去年この花を貰ったのが夏前で、今年3月でもまだ1年は経過していないので、ちょっと違和感があるなと思ったから「2年越し」という言葉を使ったのです。
時の経過を表す言い方には、「〇年越し」「〇年来」「足かけ〇年」「〇年振り」「〇年経過」等色々あって、検索すると沢山のページが出てきますが、ここは言葉の専門家という事で、「毎日ことば」(https://mainichi-kotoba.jp/enq-338)という、毎日新聞が運営するサイトの説明を引用したいと思います。
まず「〇年越し」は、今回の場合なら「1年越し」と「2年越し」どちらが正しいのか?ということが書かれていました。どちらもありのようですが「1年越しは使わない派」がやや優勢です。
コロナ禍を経て「1年越し」の入学式――この言い方、使いますか?
「○年」経過したことを言うので問題ない。使う 23.7%
「○年」にまたがることを言うので、1年の場合は使わない 28.6%
上の両方を指すが「1年越し」は「1年経過した」という意味なので使う 21.5%
上の両方を指し、紛らわしいため使わない 26.3%
しかし「1年越し」は 暦年1年にわたる、とするのは何だか片足立ちのようで居心地が悪く、書き方自体に問題を感じるのですが、このごろは「1年経過した」という意味で「1年越し」を使う場合が多いようです。出題者としてはいずれにしても落ち着かない印象を受けるのですが、果たして皆さんに受け入れられている書き方なのか。いかがでしょうか。
と書かれており、私は筆者の感覚に近くて、「1年越し」という表現には違和感があり使いたくありません。
また「2年越し」と「2年来」は似た意味での数え方とされており、
「本来どちらも、暦年・年度2年にわたることを表すが、起算点から2年経過したという意味の使われ方をすることも多く、解釈が分かれる。
記事では、『10年来』などと概数として使う場合以外は、起算点や期間を明示して誤解の余地のないように書く」
と記しています。普通は「暦年2年にわたる」ということですが、「2年前からの」と読まれることもあるので誤解されないように、ということを報道機関らしく注記していました。
そして文化庁の「言葉に関する問答集6」(1980年)には、「2年越し」という表現は、2年間ずっとあることが続いてきたということ、ないしは足かけ2年にわたり続いてきたことを示すもの、と記されているそうです。
これらの説明に従えば「○年越し」という表現は、○年間ずっとあることが続いてきたということ、ないしは足かけ○年にわたり続いてきたことを示すもの、ということになります。
つまり質問文に挙げた「1年越しの入学式」とは、1年の間ずっと入学式が続いてきたということ、ないしは足かけ1年にわたり入学式が行われてきたことを示すものとなりますが、それはおかしいですよね(余談ですが「足かけ1年」も「1年越し」と同じく片足立ちのようでおかしい感じがします。複数の要素にまたがる形でないと使いにくい言葉です)。
しかし一方で辞書には接尾語「越し」について別の用法も載っていて、時間に関する表現ではなく「それを隔てて物事をする意を表す。『窓―に話しかける』『肩―にのぞき込む』」(明鏡国語辞典3版)というものです。
「1年越しの入学式」という場合の「越し」の使い方はこの説明に沿うもので、「1年を隔てての入学式」という意味です。新型コロナウイルスの影響で昨年入学式を行うことができなかった大学などが、今年改めて2年生の入学式も実施しているケースが目に付きます。節目の行事ですので、実施できてよかったと思う一方、「1年越しの入学式」のような報じられ方には上記の通り少し困惑を感じています。
この説明からすれば今回は「2年越し」とするよりも、素直に「1年振り」「1年経過して」(やはり「1年越し」は使いたくない)とした方が正しかったみたいですが、この表現も丸1年に満たない時点ではしっくりこないですね。
また、今回妻は再び花をつけるまで継続して世話を続けていたのですから、それならば「2年越し」でも良いような気はします。
とても暇でしたので、言葉遊びみたいな事をだらだら書いてしまいました。暇だった訳はまた後日に、、。