書きかけを数日前に誤ってアップしてしまいました。途中のものをご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、これが完成版です。すみませんでした。
今日は歳を顧みず、青くさい話をします。
毎年初夏を感じるこの時期になると、ある版画とそこに書かれた詩を思い出すのですが、それが表題の、川上澄夫という版画家の初夏の風(はつなつのかぜ)という作品です。
参照:https://kawakamisumio-bijutsukan.jp/鹿沼市立川上澄夫美術館HP
この作品を知ったのは20代の後半、自分ではまだまだ青春真っ只中と思っている頃でした。元々版画や詩にそんなに興味があるほうではないのですが、この「初夏の風」にはすっかり引き込まれてしまいました。
特に私はこの版画に添えられている詩の方に惹かれました。
かぜとなりたや
はつなつの かぜとなりたや
かのひとの まえにはだかり
かのひとの うしろよりふく
はつなつの はつなつの
かぜとなりたや
旧制高校時代の作者が、通学途中に見かけた初恋の人をモデルにした作品なのですが、彼女には婚約者がいて、この初恋は実らないままだったそうです。
爺いになった今は、心がときめくといったようなことも流石にありませんが、甘酸っぱいですねえ~
川上澄夫、そして初夏の風を知ったきっかけは宮沢賢治でした。
宮沢賢治については、10代の頃にはさほど興味もなく、教科書に出てくる、いかにも先生が好きそうな作家、女子が好きそうな作家、というイメージで、積極的に読もうと思ったことはありませんでした。
それがその後色々な本を読んでいくうちに、宮沢賢治が引用される、話題になるという場面に数多く遭遇し、宮沢賢治を知らないと今読んでいる本の理解も進まない、ということも出てきました。
全集を買う金はないですから、傑作選というのを買いましたが、風の又三郎や銀河鉄道の夜といった超有名作品でも、改めてちゃんと読んでみるとすごく良くて、 遅く罹ったはしかみたいにかなり重篤化してしまいました。
その後も傑作選には入っていないものを単品でちょこちょこ買って読んでいましたが、今ではKindle版の宮沢賢治全集なら200円という破格値で読めます。単品で読み続けるなら完全無料の青空文庫もありますから、いい時代になったものです。
川上澄夫は、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を出版した「光原社」で、光原社のマッチのデザイン等を手掛けていて、それで彼の存在を知りました。宮沢賢治の作品の挿絵に使ってもぴったりな雰囲気だと思います。
川上澄夫は宇都宮で長く教員生活を送った人で、英語教師の傍ら詩を詠み、版画制作に没頭し、明るく異国情緒にあふれた多くの作品を残しましたが、その中でも最高傑作と言われているのがこの初夏の風です。
いろいろなバージョンがありますが、横浜風情のある下の作品も素敵ですね。横浜のどこにあるのかは知らないのですが、路面にはめ込まれたタイル画になっているそうです。
参照:https://jp.bloguru.com/zakkah/29208/-/delete/215697
川上澄夫の美術館は鹿沼にあります。
一度行こうと思いつつこんな事態となってしまいましたので訪問はまた先の話ですが、行く気になればいつでも行ける距離ではあります。
かの棟方志功は、画家として行き詰っていた若い頃にこの作品を見て大いに感動し、そして世界のMUNAKATAとなったのだそうです。