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映画「人間失格」と太宰治のこと

小栗旬の主演で、太宰治の「人間失格」が上映されています。

先日「記憶にございません!」を見に行った時に予告されていて、見てみたいなと思いましたが、家内は一緒に見るのはどうも、、と。まあ確かに予告を見ると、熟年夫婦が並んで見るのはちょっと気恥ずかしいですね。
ということで、一人で見てきました。

2009年にも生田斗真主演で映画化されたんだそうですが、それは記憶にありませんでした。

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出典:http://ningenshikkaku-movie.com/ 映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』公式ホームページより

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出典:https://www.cinemacafe.net/article/2019/07/01/62327.html Cinema Cafe.netさんより

 

小栗旬がとっても妖しげですね。2枚目の写真は太宰治本人の写真との比較です。この写真の太宰治の顔はむしろ役所広司似ですが、小栗旬もすごく雰囲気出してます。

監督は蜷川実花で、写真家だけあって映像はとても美しく確かに妖しげでもあります。評価できるのは映像と色彩だけだ、みたいなネットの書き込みも見ましたが、私は素直に良くできた映画だと思いました。小栗旬、沢尻エリカ、二階堂ふみといったキャストからもっと甘いメロドラマ仕立てかなと思ってました。

太宰治というと私の学生時代にも信奉者が大勢いて、太宰治が心中し遺体が見つかった6月19日は「桜桃忌」として三鷹の墓所を訪れるファンが大勢いましたし、今もそれは続いているようです。一方では、太宰なんて若い時にかかる一種のはしかみたいなもんだと言う人たちもいました。これは一時の熱狂はあるけれどもすぐに冷めてしまう、その程度の作家だという侮ったような意味であり、そういう言い方で距離を置く層が一定数いるということは、逆にそれだけ大きな存在であったという事だとも思います。

私ははまってしまった方で、沢山読んだと思うのですが、覚えているのは電子版で今も持っているいくつかだけです。電子書籍についてはまた書きますが、この「人間失格」と「斜陽」「グッド・バイ」「お伽草紙」「パンドラの匣」「ヴィヨンの妻」「富嶽百景」などを持っています。

多くの人が「走れメロス」で太宰治を知ると思うのですが、私もやはりそうでした。国語の教科書でさわりを読んだだけですが、爽やかな読後感が印象的でした。ところが上記の作品群を読み始めるとその印象は一変しました。
私生活を知れば尊敬できるようなところも少なくて、芥川龍之介に憧れるあまり、芥川賞が欲しくて欲しくてあがいている様子や行動が残されていたり、高尚な動機(自殺・心中にそういうものがあるとして)ではなく逃避型とみられるような心中・自殺を繰り返していたりします。
その一方で、ブルジョア階級の生まれでお坊ちゃん育ちであることがひどいコンプレックスであり、反面恥を知らない人間たちへの軽蔑ともなっていて、自負心と劣等感が入り混じっています。それで苦悩しつくした挙句すべてを茶化したり、逃げたりしてしまっているとも見えます。まさに破滅型の作家で、とても複雑ですね。
彼の作品は、ご本人同様に、その弱さや、矛盾や、高潔な精神やずるさ、色々なものが混ざり合っているところがやはり最大の魅力で、それが時代を問わず特に若者を引き付けるんだろうと思います。

映画は、小栗旬がカッコよすぎる気はしますし、一部のキャストに不満もありますが、太宰治を美化しすぎることもなく、冒頭で書いた通り十分満足しました。

エンドロールが始まる前に席を立とうと思っていたのですが、ラストの一コマと同時に、東京スカパラダイスオーケストラの「カナリヤ鳴く空」がドンと始まり、思わず座りなおして最後まで聞いてしまいました。ラストシーンととても合っていたと思います。

平日16:45の上映で開始直前まで観客は私一人。開始直前に若いカップルが一組来ましたが、それでも3人ですから、大きなホームシアターを独占という状態で、贅沢すぎる鑑賞環境でした。

帰りに帚木蓬生原作の「閉鎖病棟」のパンフレットを見て、また見たいものができました。帚木蓬生は現代作家では一番好きな作家です。

 

 

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