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大城立裕著「小説 琉球処分」を読んで。

 

基本はお気楽ブログなのですが、今回はちょっと真面目です。
きっかけは、大城立裕という人が書いた「小説 琉球処分」を読んだ事です。

  
小説 琉球処分(上) (講談社文庫)

小説 琉球処分(上) (講談社文庫)

  • 作者:大城 立裕
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫
 
小説 琉球処分(下) (講談社文庫)

小説 琉球処分(下) (講談社文庫)

  • 作者:大城 立裕
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫
 

 

 
私は琉球処分という言葉自体を知らなかったのですが、「処分」という言葉そのものが良い響きではないです。
明治政府のもとで琉球が強制的に近代日本国家に組み込まれていった過程を指し、1872年(明治5年)の琉球藩設置に始まり1879年の沖縄県設置に至るまでのことです。これによって500年続いた琉球王国は滅びたのですが、この本は、これを沖縄出身の著者が、琉球の視線で小説として描いたもので、大城さんは沖縄出身者として最初の芥川賞受賞(1967年)作家です。
 
中国のチベット、モンゴル政策等を見て眉を顰める人は多いと思いますが、私はこの本を読んで、140年前の日本も同じような事を行っていたのを実感しました。なんだか沖縄ははるか昔から日本の一部だったという漠然とした思い込みがあり、知識として、琉球王国が明治維新に廃藩置県で沖縄県となったことは習っていても、それはあくまでも処分(という言葉自体に性格が表れていますが)した側の記録であり、教科書や授業からも処分された側の痛みや苦しみは伝わっては来ませんでした。確かに江戸時代から琉球藩だった訳ではなく、琉球王国だったのですから、他の諸藩と同じような廃藩置県ではないですよね?
 
琉球王国は15~16世紀頃に武器を廃し殉死を禁じた、世界でも珍しい国家であり、日本が強烈な弾圧をしなかったのは、単に被支配者側に武装集団がいなかったからに過ぎない、と言っても良いのかも知れません。

そしてこの小説の舞台の明治維新となり、大久保利通をはじめとした明治政府の官僚は、新しい国家の指導者として理想を持ち、琉球問題に真摯に取り組んだ、という描き方をされてはいますが、それでも新生日本の利益が最優先だったことは間違いありません。
 

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7年前の沖縄旅行時、焼失前の首里城です。
 
アメリカの黒人差別などを見て、日本には差別はないのにと言う人がいますし、私にも正直その感覚はあります。しかし琉球問題と似た性質のアイヌの問題、被差別部落・在日韓国人・朝鮮人差別の問題と、日本にも差別・搾取の歴史はあり、終わってはいません。ところが日本には、過ぎたことは水に流そうとか、臭い物に蓋をするとかいう風土があって、突き詰めて物事の善悪を究明するという姿勢には欠けているように思います。
 
その点、今現在も黒人差別問題で揺れているアメリカですが、ずっとその問題から目をそらすことなく問い続けているという印象はあり、それは日本の見習うべきところではないでしょうか。
 
そして私が今まで聞いた中で一番感動した演説は、米国の黒人(本当はアフリカ系アメリカ人というのが正式でしょうが)公民権運動の先駆者、キング牧師の「私には夢がある(I have a dream)」です。
 
 

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