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映画「幸せへのまわり道」を観ました。

 

トム・ハンクス主演(?)の「幸せへのまわり道」を観ました。
各種映画解説記事ではトム・ハンクス主演としているものも多かったのですが、私は有名TV司会者であるフレッド・ロジャース(トム・ハンクス)を取材する記者(マシュー・リス)の方が主演なのでは?と感じました。現にこの作品でトム・ハンクスは「アカデミー助演男優賞にノミネートされた」と下の記事には書かれていました。やはり「助演」なんですよね?
またマシュー・リスの父親役で登場するクリス・クーパーという俳優さんは、今回顔と名前が初めて一致した人なのですが、顔は色々な映画で観ていてお馴染みでした。主役ではないものの重要な役どころを任される渋い役者さんですね。

 

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この映画を観た人の反応は様々で、中でも否定的な人の意見では、トム・ハンクスが演じる有名TV司会者への共感度の低さや、リアリティの無さへの批判が目立ちました。これは実在する人物なのですが、それでもリアリティが無いとされるのなら、もしこれがフィクションならばもっと散々な書かれ方をしたのでしょうね。要は、こんな聖人君子みたいな人が本当に居るのか?リアリティが全くないけど、ということであり正直私も同感でした。

 

ところが、当時米国に家族で駐在し、フレッド・ロジャースの番組を実際に見ていたという人のレビューを読んでみて、この疑問はかなり解消されました。以下かいつまんで紹介します。

 

この番組は小学校低学年以下を対象としていて、公共放送で日に何度も放映されており、語り口はとても穏やかで、フレッド・ロジャースは小さな子供たちにも優しくゆっくり語りかけ、また表現も平易だったそうです。そしてそこで彼が繰り返した伝えたのは、個性を大事にして個々を尊敬するという米国人の基本的な考え方だったようです。
当時フレッド・ロジャース好きを公言すると、米人の同僚たちからは「古臭い、陳腐」とかネガティブな反応があり、あまり表立って彼のことを言い出せない雰囲気があったそうで、そもそも教育のある大人の見るものではないみたいな印象あったのだとか。
映画の中で主人公の記者がフレッド・ロジャースをテーマにせよと命じられた時の反応が、よく当時の雰囲気を表していたようです。古臭く道徳を説くフレッド・ロジャースは、当時のメディアからさらし者的な扱いを受けていて、そんな場に招待されても自分のスタイルを変えずに落着いて反論していくトム・ハンクスによるフレッド・ロジャースの姿の再現も感動的に受取ったとこの方は書いていました。

 

なるほど、当時の米国人知識層からも古い、陳腐だ、と言われていたのであれば我々が抱く感想はむしろ制作者の狙い通りという事になります。その前提で考えれば最後の場面でのトム・ハンクスの演技も腑に落ちるところがあり、一気に映画の印象が変わりました。

 

似たような話ですが、私はもうかなり前に亡くなった放送作家、作詞家の永六輔さんに同じような印象を抱いていました。永六輔さんは、坂本九の大ヒット曲「上を向いて歩こう」の作詞者としても有名で、若い頃は安保運動に参加したり、思想的には革新派の人物だったようですが、私には真面目な顔をして道徳を語るおじさん、という感じで、それが当時の米国人がフレッド・ロジャーズに抱いていた感情に近いと感じたのです。
ところがその後、仕事の関係で永さんに直接お会いしてお話を聞く機会があって、それ以来永さんへの印象はかなり変わりました。その頃は既にかなりのご高齢でしたが、道徳臭さや押しつけがましさは全くなく、語り口は軽妙ながらもそれでいて一本芯の通った素敵な紳士でした。

 

そう考えてみると、映画の構成上は記者であるマシュー・リスが主演だとしても、陰の主演者はやはりトム・ハンクスなのかも知れないです。もう一度観返せばかなり違う感想を持つようになる映画だと思います。

 

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